卒業研究発表

日本における医療事務の需要についての-考察

― IT時代突入による変化 ―

2017年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

 近年日本では、病院の約7割が赤字と経営状況の悪化に苦しんでいる.日本の高齢化社会は今後も進んでいくと予測され,保健医療の重要性はますます大きくなると推察される.保健医療が大きくなれば,それだけ医療事務のニーズは高まる.
 その一方で,業務の効率化を目指し医療のIT化を進めざるを得ない状況となっている.その環境に重要な役割をはたすのが医事課業務であるといえるであろう.
 人工知能(以下AIとする)の発展は著しく,10~20年後には日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットで代替可能になるという推測結果がでている.その中で代替予想される職業に医療事務が含まれる.
 IT化を進展させるなかで,それに伴う業務の効率化は人件費削減につなげられ,医療機関の経営安定化を図るといった可能性を持っているであろう.
 そこで本研究では,日本における医療事務の需要を調査し,IT時代突入による変化と課題について考察することとした.

本論

1.医療におけるIT化の流れ

 我が国の医療サービスはIT化によって大きく変化している.その中で明確なものとしては,医療情報システムの導入が各医療機関で検討されており,厚生労働省による「保険医療分野の情報化に向けてのグランドデザイン」によって具体的なIT化による普及への政策が計画として示されている.

2.IT化が及ぼす、医療事務職員の現状

 近年,大学病院などの大きい病院には受付の際に自動再診受付機が設置されている.これは,患者様が診察券を入れるだけで受付業務をする機械で,医療事務のコスト削減のためのIT化の一環である.しかし,病院に来る人の大半は高齢者であり,自動再診受付機の横で職員が一緒に操作しているのが散見される.

3.医療現場に影響を及ぼすAIについて

 人間の知識や記憶には限界があり,AIを用いることによってこれまでのすべての疾病データや臨床データをAIに登録すれば,患者の疾病や症状を正確に見つけ出すことができ,その発見スピードも迅速になると言われている.AIが医療に介在することが当たり前になると,人件費や開発費,治療費や薬剤費も大きく削減されることが期待されている.
 AI導入の一例として,通常,病院の受付は診察券を受付機に差し込むと番号札が出てきて,患者様が呼ばれるのを待つ仕組みであったが,現在は自宅で予約し病院に着いたら受付ロボットにスマートフォンをかざすだけで手続き完了となる仕組みがあげられる.

4.IT化が及ぼす、病院コストの現状

 中医協の調査によるとIT導入による病院経営への影響に尋ねたところ「診療報酬の請求事務が効率化された」や「比較可能なデータの蓄積と活用が可能になった」という効果が現れている.一方で「業務が効率化され残業時間が減り,人件費が削減された」という問いに「そう思わない」(27.6%)が「そう思う」(22.4%)を上回る結果となった.事務的な業務は効率化されているものの,人件費などのコスト削減はされていないという実情が浮かび上がる.

5.医療事務職員の今後の需要

 今後IT化やAIにより作業効率は格段に上昇していくと考えられる.電子カルテシステムなどが導入され,パソコンでカルテやレセプトのデータを入力したり最終確認したりするのは人間がしなければならず,このことから医療事務職が必ずしも,不要になるとはいえない.すなわち今後業務のIT化が進むことで,特にコンピュータに強い人材は需要が増えると考えられる.

 本研究では,日本における医療事務の需要を調査し,IT時代突入による変化と課題について考察した.現在我が国の医療サービスはIT化により大きく変化している.
 今後IT化やAI化により作業効率は格段に上昇すると推測される.AIの発展によってAIが医療に介在することが当たり前になると,医療現場のあり方も大きく変わることは間違いないとされる.
 しかし,パソコンでカルテやレセプトのデータを入力して最終確認するのは人間がしなければならず,このことから医療事務職が不要になるとはいえない.高齢化により保険医療分野への注目が集まっていることから,今後も医療事務のニーズは高まっていくものと思われ,業務のIT化が進み,特にコンピュータに強い人材の育成が今後の課題であろう.

文献

1) 靍真紀子,岡部千鶴:医療事務のIT化に対応したカリキュラム検討の必要性(第1報),久留米信愛女学院短期大学研究紀要,第34号,2011,111-115
2) 長谷川正志:医療のIT化と電子カルテの普及に関する一考察,豊橋創造大学短期大学部研究紀要,第20号,2003,83-92

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