慢性期脳梗塞患者において歩行能力向上が認められた症例
― 有効な理学療法と歩行能力の関連性 ―
2019年度 【理学療法士学科 夜間部】 口述演題
はじめに
今回,臨床実習にて四肢麻痺(右<左)を呈した慢性期脳梗塞患者に対して,主に軽度麻痺側(右側)に治療アプローチを行い,T字杖歩行能力の向上が認められた.先行研究から慢性期脳卒中患者における歩行能力向上に有効な理学療法をまとめて,担当患者の考察を行った.
症例紹介
30歳代後半男性.13年前に脳梗塞を発症し四肢麻痺(右<左)を呈している.現在ADLは全て自立,移動は屋内四点杖歩行である.HOPEは結婚式をT字杖で歩けるようになりたいである.
理学療法評価と治療
10m歩行にて124秒→55秒,FRTにて14.5cm→18cmと改善を認めた.治療は軽度麻痺側に対し,筋力増強・動作安定を目的に膝・足関節伸展運動,右下肢踏み出し練習,T字杖歩行トレーニングを行った.
考察
先行研究では,非麻痺側筋力の向上・課題指向型アプローチ・動的バランス能力の向上などが移動能力向上に有効であると報告されている.臨床実習介入時には歩行能力向上が得られたが,先行研究から再考察した結果,想定される運動課題・環境(結婚式)を再現しての歩行訓練・動的バランス能力への個別化したアプローチとともに、廃用性筋力低下が考えられる麻痺側への筋力向上も重要であると分かった.